働き方・生き方
HUMAN RESOURCE DEVELOPMENT 人材育成
冨倉由樹央【第1回】ゼネラリストではなくスペシャリストを育成すべき – 本物のグローバル人材とは何か
【コラムジャンル】
クーリエ・ジャポン , グローバル , スペシャリスト , ゼネラリスト , ダイバーシティ , 人材 , 冨倉由樹央 , 本物 , 第1回 , 育成 , 連載
2015年01月21日
冨倉氏は2004年から1年間、ニューヨークの大手出版社、ランダムハウスに出向していた経験を持つ。日本という国を海外から見たことのある冨倉氏に、まずはグローバル人材の要件について聞いてみた。
斬新な切り口で異彩を放っている雑誌『クーリエ・ジャポン』。その2代目編集長として活動しているのが、ニューヨークの出版社に1年間勤務していた経験も持つ冨倉由樹央氏だ。グローバル社会をリアルに体験した冨倉氏に、世界を相手に戦うには、またそうした人材を育成するには何が必要なのかを聞いた。
(本記事は、2014年7月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成いたしました。
記事中の年齢、肩書きなどは2014年取材時のものです。)
ゼネラリストではなく、スペシャリストを育成すべき
世界の今を、メッセージ性の高い“ストーリー”として届けている『クーリエ・ジャポン』。同時に世界のあらゆるメディアから厳選した情報も発信している同誌の、2代目編集長として陣頭指揮を執っているのが冨倉由樹央氏だ。冨倉氏は2004年から1年間、ニューヨークの大手出版社、ランダムハウスに出向していた経験を持つ。日本という国を海外から見たことのある冨倉氏に、まずはグローバル人材の要件について聞いてみた。
「グローバル人材になり得るための1つの要素が『スペシャリティ』を備えていることだと思います。現在、アメリカ企業に勢いがあるのは、個人のスペシャリティを育成することで『イノベーションを起こそう』という意識が高いため。それに対して日本企業は、ジョブローテーションによってゼネラリストを育てようという素地があります。日本とアメリカ、どちらか一方の企業文化が優れているとは思いませんが、これだけ日々状況が変わる現代では、個の突破力、すなわちスペシャリティは重要なスキル。今、日本が苦しんでいるのはそれが欠けているからではないでしょうか」
日本にいても身につけられるダイバーシティ
スペシャリティのほかに、グローバル人材となり得るために欠かせない要素が「ダイバーシティ」だと冨倉氏は考える。日本では宗教や文化、価値観などが大きく異なる人と仕事をすることはほとんどない。そのため阿吽の呼吸や、全てを語らないことを美徳とする。だがそうしたコミュニケーション手法では、様々な価値観が存在し、多様な文化が入り交じる海外に出た際、人と折衝交渉をして物事を進めていくことは難しい。
冨倉氏はダイバーシティに適応する意義について、こんな例を挙げながら説明してくれた。
「1年間アメリカに滞在して感じたことは、向こうにはそもそもグローバル化という概念がないということ。つまり、アメリカこそが世界だと思っている。それを象徴しているのがアップル社で、世界各国で販売されている商品はもちろん、広告のコピーすらその国にローカライズしません。しかし、アメリカには世界中から優秀な人が集まってくるので、企業の中でダイバーシティが担保されている。
一方それとは対照的に、フランスやイタリアといったヨーロッパの企業はその国に応じて商品などをローカライズする場合が多い。また中国や韓国の企業も、ローカライズすることが多いですね。そうした工夫によって開発され、インドでヒットしたのが“うるさいクーラー”です。日本では、クーラーは静かであればあるほど性能が高いとされますが、インドではそうではないのです。あまりに静かだと『効いていないのではないか』と疑われてしまう」
この韓国企業は社員を現地に住まわせることで、インド国民の持つ価値観を認識させたようだ。ダイバーシティに慣れるためには、確かに外国で暮らすことが一番手っ取り早いかもしれない。だが、海外生活という道を選ぶのは企業にとっても、個人にとってもハードルが高い。そこでダイバーシティを実感するために誰もができる方法として有効なのが、違う業界に友人をつくるということだ。
「人と会う頻度の高い趣味でも持たない限り、多くの人はほとんどの時間を同じ会社の人と過ごすことになるでしょう。でも別業界に友人をつくるだけで、違った視点を得ることが可能になります。日本にいても、そうした地道な努力とちょっとした意識の持ち方によって、ダイバーシティに適応していけるはずです」
(本物のグローバル人材とは何か 冨倉由樹央編【第2回】に続く)
(本記事は、2014年7月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成いたしました。
記事中の年齢、肩書きなどは2014年取材時のものです。)